コラム「幼児の発達過程は、今も昔も変わらない(後編)」|幼児教室探しの『幼児教室どっとこむ』

−幼児の発達過程は、今も昔も変わらない(後編)−

中村「知識として教えられるのではなく、自分で不思議と思ったことを何とか解いてみようという気持ちを育む事が大事なんです」

高崎「正解である必要はないんですよね」

中村「そうそう。何か混ぜ合わせてドロドロ… でもいいわけです。その行為と科学とは全く同じ原理だと思う。科学技術時代は、それを古いとか間違っているとか言って否定してしまった。それが今の社会を作ったんです。特に子ども時代というのは、(そういう)人間が進化していく道筋を残しておかないといけないと思う。生物学の言葉に“個体発生は系統発生を繰り返す”という言葉がありますが、子どもは人間の歴史を繰り返しいて成長していくんです」

高崎「人間の能力は今も昔もたいして代わりはないと思うのですが。縄文土器にほどこされている技術や工夫と、現代の陶器との差異がほとんど感じられないとか…」

中村「もちろんもちろん。脳の構造なんかは全く同じです。ただ、蓄積があるかないかだけですよね。だから子どもっていうのは始めからやるわけです。人類が誕生した時と同じようにして生まれてくるわけですから、始めをやるべきなんですよ。ところが大人が早く早くと言って20世紀を入れたがる。縄文からずっとやっていった方が本当の意味で育ちます。その途中には魔術みたいなものもあるわけでしょ。ところが魔術はだめで科学が正しいと言って、2才の子どもに一生懸命正しい事を教える。子どもが夢みたいな事を言っていると“そんなことはないよ!!”なんて言ってしまったりする。いわゆる“個体−系統”という育つ本質を否定してしまっているんですね。子どもが人間の歴史をやり直している時に、あまり先の事をボンボン入れると、ちゃんと育っていかないんですよ。脳の構造もそうなっています。私達の脳は三層になっているんです。まん中に爬虫類の脳というのがあって、その外側に原始哺乳類の脳、一番外が大脳皮質で一番新しい脳です。脳っていうとみんなすぐにお勉強とか記憶につなげたがるけれど、私達の脳の大部分がやっていることというのは自然にやること、例えば歩くとかそういうことなんです。その脳の方がずっと大きいんです。それを全部上手に使いこなさず、一番外側の大脳皮質だけ使おうったって無理なんですよ。昔からつながっている、私達の行動のほとんどを支配している爬虫類の脳と原始哺乳類の脳を小さい子どものうちにきちんと使わないといけないのに、今の人は大あわてで子どもの外側の脳に知識だけ入れようとして、中心の脳を育てていないんですよ。外側の脳は後から出来ましたから、大人になってからでもどうにでもなるんですが、中心の脳は古い脳ですから、子どもの時にやっておかないとだめなんですよ」

高崎「2000年前に生まれた子どもだって、今の子どもだって同じだと思うんです。それなのに今の子ども達はここ10年20年の間に築かれた知識を教育として突然受けなくてはならなくなったわけですよね。これには少々無理がないですか?」

中村「まったくそう!しかもね、科学は万能だって言われているけれど、私達が子どもを育てた頃には、母子手帳に日光浴をさせなさいと書いてあったのに、今はさせるなってなっているじゃないですか。紫外線がDNAをこわすことがわかったからですよね。あの頃は母子同室の育児(同じ部屋で寝る)も否定的だったし、人工栄養が一番バランスがよいと言われて、母乳よりよいとされた… 今とは逆さまだったわけ。それが10年20年とそんな短い間にくるくる変わるんですよ。育児とか栄養とか教育は科学でやってはいけないと思う。科学についていくと10年ごとにくるくる変わる。でも育児はやり直しが出来ません。10年前には戻れませんからね。科学は一面を見る物ですから、全体を見るものは余り科学に頼ったらいけないと思います」

中村さんは現在、中教審にもかかわっていらっしゃいますが、小学校へのコンピュータ教育の導入さえどうなのか?というお考えです。子どもは放っておいても興味を持ち、コンピュータの操作くらいアッという間に身に付けるだろう、とおっしゃいます。それ以前に、昔をやり直す時間をたっぷり取ることが大切なんだ、ということです。

→ −幼児の発達過程は、今も昔も変わらない(前編)はこちら−

幼児教室 パルクリエイション
代表 高崎 利子先生

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