コラム「絵を描く楽しさを多くの子どもたちに伝えたい(後編)」|幼児教室探しの『幼児教室どっとこむ』

−絵を描く楽しさを多くの子どもたちに伝えたい(後編)−

■自分でつくった壁を乗り越えた体験は、生きる力につながる
自分の中の壁を自分で乗り越えた時、子どもたちは大きく成長します。絵を描くのは得意ではなく、うまく描けないと思い込んでいたAくん。難しそうなものには初めから手を出しません。描いてもうまくいかないと「もう描かない」と終わりにしてしまいます。

ある時、物を見て描くのをやめ、『グルグル描き 』をやってみました。
 「頭をからっぽにして、画用紙に好きなだけグルグル描いてみよう」
 「今度はその画面をゆっくり回して見て、何かイメージが見えてきたら、そこから絵にしてみよう」
すると、Aくんは「見えた!」「見えた!」「犬だ」と大喜び。私にも確かに見えました。ダックスフントのような顔が見えました。二人で感激です。
「いいね!」「これいいな!」私はとてもこの絵が好きになりました。もちろん、Aくんの大のお気に入りになったのはいうまでもありません。
この絵が突破口になりました。次からはどんな難しそうなモチーフにも自分から挑戦していきましたし、調子が悪いときは「またグルグル描きしよう」と気分を変えることもしていました。

その後彼が描いた「自画像」に再び大きな感動を受けました。現実をしっかり見据えたゆるぎない彼の心意気、自信に満ちた表現を感じることができました。自分の力で自分の壁を乗り越えたその自信は、これからの彼の生き方に大きな力になるものと確信します。

■「ものを見る」ことが豊かな表現の源泉
私は、子どもたちと活動する中で「ものを見る」ことを大切にしています。日常見慣れている野菜や果物、花、葉っぱ、風景、人の動きもどれ一つ同じものはありません。その時々の色や形を楽しむことも大事ですが、ものを見るということは、そのものに心を寄せなければなりません。感じとる力は、この「見る」ことから培われていきます。
心を寄せるということは、自分の心を開き、ものをあるがままに受け止めることであり、やさしさや思いやりがなければ、心の目は開くことはできません。心をこめて「見る」。そのことによって感性が磨かれ、またたくさんのものを見る経験の中で、豊かなイメージ力が身についていきます。それが豊かな表現の源泉だと考えています。

■子どもの絵は心の表現
子どもは大人が思っている以上に自尊心が強いものです。子どもなりの「こだわり」もしっかりあります。納得がいかなければ、善しとしません。
時々「こうしたらいいんじゃない?」「この色はどう?」などとアドバイスのつもりで言っても、「いいんだよ、これで!」と返ってくることがあります。そう言われたら、それが正解です。その子の中から出てきた結論は大切なものです。大人の見方や考え方を押し付けては、プラスにはなりません。不用意な言葉で傷つけてしまってはやる気を無くしてしまいます。
子どもの絵は技術などではなく、心の表現として受け止めてほしいのです。まさに生きている子どものエネルギーそのものです。

B子ちゃんは、私の教室で絵を描くのが楽しいのでしょう。いつもにこにこ笑顔です。私が知らないうちに何か描いていました。完成するまで私には見せてくれません。次の週に描き終わって、そっと見せてくれた絵は、クラスのお友だちみんなの笑顔でした。描くことが楽しくて、みんなといることが楽しくて、そんな気持ちが十分に伝わってきます。

Cくんは新しく教室に来てくれた小学2年生です。
「今日のモチーフはね…」と話し始めてもなかなか興味を示してくれません。その日、私は飼い猫に腕を咬まれ、両手がテープや包帯でぐるぐる巻きという有り様でした。それを見て気になって仕方がなかったのでしょう。わけを話すと、「先生を描く」といって包帯姿の私を描いてくれました。「痛いの?」と私を気遣いながら、やさしいCくんの気持ちをいっぱい感じさせてくれました。

おわりに
子どもたちの絵を見るときは、ぜひよいところをたくさん見つけて、いっぱい褒めてあげてください。どんなに些細な表現でも、その子の心が描かれていることを見つけてあげてください。私たちの願いは、子どもたちが生き生きとしたエネルギーに満ちて心豊かに成長することです。そうできるように、大人たちが支え合う社会であってほしいと切に願っています。

絵画教室アトリエえるぶ
主宰 田中 経子 先生
※現在教室は閉鎖しました

 → 絵を描く楽しさを多くの子どもたちに伝えたい(前編)

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